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研究でしびれるということ(4)

 実験科学に関わるヒトを虜にする「セレンディピティ」。松江一教授がこれまでに「しびれた」研究例を連載で紹介しています。今回が最終回。青森県の食材に含まれる機能性成分の研究の中にも、しびれる発見がありました。
↓こちらも合わせてご覧ください。

研究でしびれるということ(1)
研究でしびれるということ(2)
研究でしびれるということ(3)


栄養学科 松江 一

イカ墨の研究の研究でしびれた瞬間3 ― 一枚の電気泳動―
 その後、地元青森で地域産学官共同研究をする機会に恵まれ、我々はイカ墨から新規ムコ多糖を単離、構造決定、抗腫瘍活性を明らかにし、それが、全国いや世界に「イカ墨食品ブーム」を起こしたと勝手に思っている。この時もあの真っ黒なイカ墨から得た酸性多糖が、既知のどのムコ多糖分解酵素でも分解されず、「新規のムコ多糖だ!」と思わせた一枚の電気泳動の結果があった。しびれた瞬間である。この研究は、地域性を持った黒い素材に先端科学技術の光をあて、バブル崩壊後の閉塞感が漂う日本に、ホッとする明るい話題をまいた研究であった。

シジミエキスの研究でしびれた瞬間4 ―オルニチン―
 シジミエキス肝助の開発では、シジミが、体に良い事は解っていたが、何が良いのかよく解らなかった。そんな時、シジミエキス100%の製品を作りたいという、骨のある県内企業が在り、その品質管理のためのアミノ酸分析のチャートで、ある成分(オルニチン)の変化を見逃さなかった研究員がいた。しびれた瞬間であった。シジミは生きるか死ぬかの低温下で、なんとオルニチンを8倍も増し、自分を守っていたのだった。そしてシジミのオルニチンは多くのヒトに知られるようになった。

最後に
 実験科学で新規性や独創性を出すのは、大変であり、実験は常にうまく行くとは限らない。うまく行かないからこそ、チャレンジする価値があり、また予想も出来ない現象、作用や物質に巡り会った時は、しびれる瞬間であり、実験科学をやってよかったと思う瞬間でもある。そのしびれる瞬間を多く味わうには、若い時に味わった体験や感動であり、自然や生命の不思議さの前で、謙虚にしかも真摯に、感受性を豊かに、粘り強く立ち向かう姿勢であろう。

                                            (連載おわり)
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